ひがし神戸相続税理士・行政書士事務所

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令和6年から相続時精算課税による贈与が激増する!? 令和5年度与党税制改正大綱をチェック!

昨年12月に公表された令和5年度与党税制改正大綱。
今年10月からスタートするインボイス制度など気になる税制改正もありましたが、
今回は以前よりうわさされておりました相続税・贈与税の税制改正について
ご質問をいただく機会が増えて参りましたので、ポイントを簡単にまとめてみたいと思います。

主なポイントは下記の3つです!
① 相続税の計算における生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長
② 贈与税の相続時精算課税制度に基礎控除が創設!!
③ 今後の対応

贈与税は選択制!?贈与税の2つの制度、暦年課税と相続時精算課税って何?

贈与税の計算にあたり、下記の2つの制度(暦年課税と相続時精算課税)から計算方法を選択することができることをご存じでしょうか?

(1)暦年課税

暦年課税制度における贈与税は、

① 贈与で財産をもらった人が、
② 1月1日から12月31日までの1年間でもらった金額(不動産などの場合は評価額)を合計し、
③ そこから110万円(基礎控除)を差し引いて
④ 税率をかけて計算します。

税率には一般税率と特例税率の2種類があり、
その年の1月1日時点で18歳以上の人が、父母や祖父母など(直系尊属といいます)から贈与を受けた場合は、低い方の税率である特例税率を使って計算することができます。

基礎控除はもらう人1人あたり年110万円となります。

(参考)贈与税の計算と税率(暦年課税)国税庁HP

通常は、この暦年課税で贈与税を計算します。

例として、1年間で贈与を受けた金額が、お父さんからもらった現金100万円のみであれば、110万円の基礎控除以下となり、贈与税がかかりません。この場合、贈与税の申告も必要ありません。この手軽さがよく利用されている理由の一つになります。(贈与契約書の作成等は別途行ってくださいね☆)

(2)相続時精算課税(改正前)

相続時精算課税制度における贈与税の計算は、適用要件が複雑ですが計算は簡単です。

(以下、相続時精算課税は精算課税と略します。)

① 60歳以上 ※1 の父母または祖父母などから
② 贈与で財産もらった人 ※2
③ 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間 ※3 に、
④ 『相続時精算課税選択届出書』等の書類を添付 ※4 して
⑤ 贈与税の申告書を税務署に提出する場合、
⑥ 届出書で選択した父母または祖父母などからの贈与については、
⑦ その年の1月1日から12月31日までの1年間で贈与を受けた財産を合計し、
⑧ 特別控除限度額2,500万円 ※5 を控除した残額に、
⑨ 一律20%の税率をかけて計算します。

※1 住宅取得のための資金の贈与を受ける場合、60歳未満でも適用がある場合があります。(措置法70の3)

※2 その年の1月1日時点で18歳以上の推定相続人(子など)や孫

※3 この期間が経過した後は、適用を受けることはできません。

※4 精算課税を選択する最初の年分の贈与税の申告書に添付します。その年以降は、精算課税を選択した父母または祖父母などからの贈与は、すべて精算課税での計算となり、暦年課税に戻すことはできません。

※5 前年以前に既に控除した金額がある場合は、その金額を2500万円から控除した残額が限度となります。

控除限度額まで1年で一括で贈与しても、贈与税がかかりませんし、超える場合でも税率20%で済みますので、まとまった資金や財産を贈与する際に利用が検討されます。

ただし、歴年課税と異なり年110万円という基礎控除がないため、先ほどの例で、お父さんからの贈与について精算課税を選択している場合、お父さんからもらった金額が100万円であっても贈与税の申告が必要となります。(現行税制)

なお、精算課税を選択をしていない方からの贈与については、歴年課税での計算となります。

(参考)相続時精算課税の選択 国税庁HP

また、相続時精算課税という名前のとおり、この制度を利用して贈与を受けた方は、選択をしていた父母や祖父母などが亡くなった時は、精算課税で贈与を受けた財産の価額(贈与を受けた時の時価)を相続財産に加算して相続税を計算し、納付済みの贈与税を精算をすることになります。その贈与税が相続税よりも少ない場合は差額を相続税として納付し、多い場合は相続税より多く納付した金額が還付されます。

このことから、生前相続といわれることもあります。

改正ポイント① 生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長(暦年課税)

相続時精算課税による贈与の場合は、将来の相続税の計算上、贈与でもらった財産を相続財産に加算する旨の説明をいたしましたが、歴年課税の場合でも、相続などで財産を取得した人については、贈与を受けた財産を相続財産に足し戻して相続税を計算する必要がある場合があります。

足し戻す必要がある贈与財産は、現行税制では相続開始(死亡)前3年以内に亡くなった方から贈与を受けた財産とされております。この間に贈与を受けた金額が、基礎控除の110万円以下でも加算対象となります。

今回の税制改正大綱によれば、令和6年1月1日以降の贈与分から、加算対象期間が3年から7年に延長されることになります。
※なお、加算対象期間が、3年以内より前の贈与財産の合計額から100万円が控除されます。

また、精算課税とは異なり、加算対象期間に納付した贈与税のうち、加算された贈与財産に対応する贈与税は相続税から控除されますが、その贈与税が相続税より多い場合でも還付されませんので贈与税がかかる金額で贈与を行う場合にはご留意ください。

改正ポイント② 相続時精算課税に基礎控除が創設!!

今回の改正の注目ポイントはこの精算課税の基礎控除の創設ではないでしょうか。

上記に記載しておりますとおり、現行税制では、精算課税を選択した後に、精算課税の適用を受ける贈与については、金額が110万円以下であっても贈与税の申告が必要ですし、相続税の申告の際に相続財産に加算され相続税が計算されます。

今回の改正で、令和6年1日1日以後、精算課税で贈与を受けた財産から110万円が控除できることになり、その範囲内であれば贈与税の申告も不要となる見込みです。また、相続税の計算の際にも110万円までは足し戻しされないことになります。

※2人以上から精算課税贈与を受ける場合は、基礎控除額110万円を按分して計算することになります。

以下、令和5年度税制改正大綱から該当部分を抜粋します。


①相続時精算課税制度の使い勝手向上
相続時精算課税制度は、平成15年度に次世代への早期の資産移転と有効活用を通じた経済社会の活性化の観点から導入されたものである。選択後は生前贈与か相続かによって税負担は変わらず、資産移転の時期に中立的な仕組みとなっており、歴年課税との選択制は維持しつつ、同制度の使い勝手を向上させる。具体的には、申告等に係る事務負担を軽減する等の観点から、相続時精算課税においても、歴年課税と同水準の基礎控除を創設する。これにより、生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで、次世代に資産を移転しやすい税制となる。

(中略)

(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等される当該特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

まとめ(今後の対応)

今回の税制改正の結果、将来の相続税の計算の際に、歴年課税で贈与したことで相続財産に加算されることとなったが、精算課税を選択していれば加算されなかった、といったケースが出てくることが予想されます。令和6年以降に生前贈与を行う場合には、精算課税の選択の検討が必須となることと存じます。

例えば、父からの生前贈与について、精算課税を選択して今回創設される110万円の非課税枠を利用し、母からは暦年課税で110万円の生前贈与を受ける場合は、最大220万円の非課税枠を利用することが可能です。
この場合、母からの暦年課税贈与について、加算対象期間分は母の相続財産に足し戻される場合がありますのでご留意ください。

また、今回改正の対象とならなかった、相続や遺贈、生命保険金などの受取り等によって財産を取得しない相続人の配偶者や孫への暦年課税による贈与も引き続き選択肢となるものと存じます。

以上、相続税・贈与税の制度も一層複雑になって参りました。簡単にまとめるつもりが長くなってしまい、最後までお付き合いくださいました方、誠にありがとうございました。相続税については、なかなかご家族で話をしにくいテーマでありながら、ご家族にとって非常に重要なテーマでもあります。今回の税制改正をきっかけのひとつとして、将来の相続税を考慮した生前贈与をご検討の方は、どうぞお気軽に税理士にご相談くださいませ。

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